• メンブレンスイッチの構造とは

    ここでは、最も基本的なメンブレンスイッチを例にして、その構造を簡単に説明します。

    一般にメンブレンスイッチとは、上部接点シートと下部接点シートと呼ばれる2枚のPETフィルムの間に、スペーサーをはさんで貼り合わせ、さらにその上に表面シートと呼ばれるデザイン印刷したPETフィルムを貼り合せたものをいいます。

    このスペーサーによって上下の接点シートを絶縁し、接点印刷部分を上から押すことで導通するという構造のスイッチが、メンブレンスイッチ、もしくは、シートスイッチと呼ばれます。

    基本構造図

    基本構造図

    メンブレンスイッチの部材

    製品名 イメージ画像 詳細
    表面シート 表面シート みなさんが直接さわる部分です。
    エンボスのついたもの、平らなもの、ざらざらしたもの、つるつるしたもの等、用途に応じて様々に加工することができます。
    上部接点シート 上部接点シート PETフィルムに導電インク(銀ペースト、カーボンペースト)を印刷してあります。
    スペーサー スペーサー 「上部接点シート」と、「下部接点シート」を絶縁するためのものです。通常、PETフィルムの両面に糊が付いたものを使用します。
    下部接点シート 下部接点シート 「上部接点シート」と同じく、PETフィルムに導電インクを印刷したものです。この2~4のシートを貼り合わせたメンブレンは、みなさんがお使いのキーボードにも使用されています。
    裏面シート 裏面シート スイッチの裏側の粘着シートです。この裏面シートによって、メンブレンスイッチを筐体へ貼り付けます。

    この1~5のシートが貼り合わされてメンブレンスイッチになり・・・

    様々な装置に取り付けられて、みなさんのお手元に届くのです。
    メンブレンスイッチは表面全体に表面シートを貼りますので防滴性、防塵性に優れています。さらに防水用の加工を施すことにより防水性を高めることも可能です。

  • 接点シート その1:回路の引回しの方法

    メンブレンスイッチは、上下接点シートに印刷された導電インク(銀ペースト、カーボン)によって電気を導通させます。
    この導電インクの引回しには2種類あります。

    種類 イメージ画像 詳細
    1コモン 表面シート スイッチ1つにつき、1つのピンが必要になります。
    また、もう1本グランドのピンがつくので、ピンの数は「スイッチの数+1」となります。
    マトリックス 上部接点シート ポリエステルフィルムに1本のピンを、いくつかのスイッチに共通して使います。
    左の例では、3×4のマトリックス(12キー)に対しピンの数は7本となっています。
    マトリックスの方が1コモンよりピン数を少なくできます。
    このためスイッチの数が多いときや、引き回しの面積が狭いときはマトリックスの方が適しています。導電インク(銀ペースト、カーボンペースト)を印刷してあります。
  • 接点シート その2:導電インクの種類

    メンブレンスイッチの接点シート(ポリエステルフィルム)には、スクリーン印刷によって導電インク・絶縁インクが印刷されます。 使われるインクは主に4種類です。

    種類 詳細
    導電インク 銀ペースト・カーボンペースト・ブレンド
    絶縁インク レジスト

    特徴

    銀ペースト(ag)

    ・抵抗値が低いので、導電用のインクとして用いられます。・環境の影響を受けやすく、酸化やマイグレーションを起こす可能性があるため、必ずカーボンやレジストによって保護します。

    カーボンペースト(C)

    ・酸化に強く、また低抵抗で導電性もあります。銀ペーストの保護に用いられます。接点部、コネクタ接続部には不可欠です。

    ・接点部、コネクタ接続部位外にも、銀ペーストより少し太めに印刷して、銀ペースト印刷部分を覆い保護することもできます。(オーバーラップ)

    ブレンド

    ・銀ペーストにカーボンを混ぜた導電インクです。

    ・回路を保護するためのカーボンインクを印刷する必要が無く、印刷工程が減るため、価格が下がります。

    ・耐久性が少し落ちるため、使用環境によっては不向きな場合があります。

    レジスト(絶縁インク)

    ・絶縁性が非常に良く、導電インクの酸化やマイグレーションの防止に用いられます。

    ・カーボンよりも導電インクの保護に優れているので、防水仕様等に適します。

    ・引き回しの面積が狭く、カーボンペーストを太めに印刷できないとき(オーバーラップ出来ないとき)は、レジストで保護します。

    ・レジストを印刷する分工程が増えるので、価格は若干高くなります。

    ・ジャンパー回路で回路を絶縁するためにも用いられます。

    レジストの硬化

    レジストを硬化させるには熱硬化とUV硬化の2方法があります。UV硬化は熱硬化より厚みが出せるため(約50μm)、のり印刷と併用することにより、スペーサーを使わなくても接点の絶縁が可能です。

    接点部の例

    1.銀ペーストをカーボンペーストで保護した回路(オーバーラップ)

    (A)接点側から見た図
    (A)接点側から見た図
    (B)ポリエステルフィルム側から見た図
    (B)ポリエステルフィルム側から見た図

    2.接点部のみをカーボンペーストで保護し、他の部分はレジストインクで保護した回路

    表面シート
    スイッチ部拡大図
    (A)接点側から見た図
    (A)接点側から見た図
    (B)ポリエステルフィルム側から見た図
    (B)ポリエステルフィルム側から見た図

  • その3:接点シートの構成方法

    接点シートの構成方法には主に3種類あります。
    回路が1コモンかマトリックスかということや、 使用目的、取り付ける筐体の条件などによって、どの構造にするかが決まります。

    1. 折り曲げタイプ
    折り曲げタイプ
    折り曲げタイプ

    1枚の接点シートを折り曲げます。接点シートは上下に分かれていません。
    コネクター部の接続テールは1本ですが、複雑なスイッチ構成を配線できます。
    折曲げ部分が多少(0.5mm程度)ふくらみます。

    ◆適応する回路:1コモン、マトリックス
    2. 櫛形接点タイプ
    櫛形接点タイプ
    櫛形接点タイプ

    上部接点シートと下部接点シートが分かれています。接続テールは1本です。
    下部接点が櫛型をしており、 上部接点を押すことによって導通する仕組みです。
    上下の接点シートを折り曲げないのでこの部分のふくらみが無く、仕上がりが1番きれいです。 ふくらみを気にする表面パネルスイッチに最適です。

    ◆適応する回路:1コモン、マトリックス
    ※マトリックスの場合は、ジャンパー回路(下記参照)を使用します。
    ジャンパー回路
    ジャンパー回路

    込み入った回路を配線する必要があるとき、キバンはスルーホールを使って両面パターンにすることができます。
    しかしメンブレンの場合はスルーホールが使えません。そのかわりに、ジャンパー回路を使用します。 これは、パターンの上に絶縁インク(レジストインク)を印刷して、その上に再度パターンを印刷するという方法です。
    上にも記したように、ふくらみが無くきれいに仕上がりますが、印刷工程が増えるので、 その分折曲げタイプより少しコストがかかります。
    回路の引き回しのスペースが取れない場合に、このジャンパー回路を用います。

    ◆適応する回路:マトリックス
    2本テールタイプ
    2本テールタイプ
    2本テールタイプ

    接点シートが上下に分かれており、接続テールも2本です。
    折り曲げタイプのようなふくらみは出ませんが、取り付け側のコネクタが2個必要になります。 このため取り付け側の状況によっては使用が限られることもあります。

  • メンブレンスイッチの取り付け方法の例

    メンブレンスイッチの裏側は両面テープになっていて、これを筐体や板金などに貼り付けて使用します。主な取り付け方法の例をご覧ください。

    メンブレンを筐体に貼り付けるタイプ

    メンブレンスイッチを筐体に貼り付けます。
    シートスイッチから出ているテール部を、制御基板コネクタに差し込み使用します。
    接触抵抗300Ω以下、使用電圧30V以下の弱電流用です。
    スイッチの最低ピッチ(スイッチの中心と中心の間の距離)

    板金を使用するタイプ

    メンブレンスイッチを板金に貼り付け、筐体に組み込みます。
    板金を使用するタイプ

  • 設計に関する注意点

    スイッチの最低ピッチ(スイッチの中心と中心の間の距離)

    a.エンボスの形状が直径10mmのとき : 14mm
    b.エンボスの形状が直径8mmのとき : 12mm

    スイッチの最低ピッチ(スイッチの中心と中心の間の距離)

    シートの外端からエンボス部の端までの距離

    ・最低4mm

    シートの外端からエンボス部の端までの距離

    シートの外端からテールの出し口までの距離

    ・3~4mm (テールが中間出しの場合)

    シートの外端からエンボス部の端までの距離

    表面シートの公差

    ・+0mm、-0.3mm

    推奨コネクタ

    [日本モレックス株式会社 FFC/FPC用コネクター]
     ・5597-NAPB(水平型)
     ・5597-NCPB(垂直型)

    [日本圧着端子製造株式会社 プリント基板用コネクタ/FFC用]
    [日本モレックス株式会社 FFC/FPC用コネクター]
     ・□□FE-BT-VK-N(トップ型)
     ・□□FE-ST-VK-N(サイド型)
     ・※□□:極数

    注:上記の値は参考値ですので、仕様によっては変わる場合もあります。詳しくは弊社までお問合せください。

  • 見積りについて

    メンブレンスイッチの見積りには、いくつかの情報が必要となります。基本的な必要項目を挙げますので、見積依頼の際に参考にしてください。

    1. 外形寸法、テールの長さ、テールが端面出しか中間出しかどうか
    端面出し
    中間出し
    2. スイッチの数
    3. 表面シートの色数

    デザイン上の色数(透明なフィルムに印刷しますので、ベース色や白・黒も含めてお教えください)、およびUV・スモーク印刷等の有無
    参考:表面シートのUV加工

    インクジェット印刷
    表面シートのUV加工
    4. メンブレンスイッチのタイプ

    クリック感の有無、エンボス加工の有無、LEDの有無、キー照光など
    参考(エンボス加工):クリックエンボスタイプ、エンボス加工
    参考(金属ドーム):金属ドームタイプ

    クリックエンボスタイプ
    金属ドームタイプ
    5. 抜き穴、透明窓があるかないか

    LED窓、LCD窓、7セグ窓がある場合は寸法もお教えください。

    LED窓
    LCD窓
    7セグ窓
    6. 使用環境

    例:防水・防塵性が必要、屋外で使う、高温になる場所で使う 等

    防水タイプ
    耐油メンブレン
    7. Lot数

    ※弊社のメンブレンスイッチは、全てカスタム製品となりますので、製品単価やイニシャル費は、製品の仕様によって全く異なります。
    ある程度(外形寸法など)の仕様が分かれば概算見積りをお出しできますので、全ての項目をお知らせいただかなくても大丈夫です。よく分からないことやお困りのことがありましたら、私たちが解決策を提案いたします。どうぞお気軽にご連絡ください。